昆虫を中心とした動物の運動や行動のしくみを、「脳・神経系」、「身体の構造」、「生物を取り巻く環境」の三点から解明し、「生物らしい動き」を機械で再現することを目指して研究を行っています。生物学の知見を新しいものづくりに結び付け、環境に適応できる機械、そしてヒトと調和できる機械を創造します。
昆虫を対象として、(1)飛行のメカニズムの研究、(2)生物ナビゲーションの研究、(3)生物模倣・生物機械融合による匂い源探索の研究の3つの研究グループで進めています。
(1)飛行のメカニズムの研究:巧みな飛行制御を行う昆虫の飛行メカニズムについて研究しています。神経や筋肉の働きといった生理学的知見に加え、外骨格の受動的変形が羽ばたき運動の生成に重要な役割を果たすことを、計測とシミュレーションで明らかにしました。
(2)生物ナビゲーションの研究:小さい体でありながら障害物を巧みに回避したり、目的地に到達するしくみを調べています。視覚情報による衝突回避や聴覚ナビゲーションを対象に、昆虫用のバーチャルリアリティ装置を開発し研究を進めてきました。また、得られた生物学的知見をロボットに応用する研究も行ってきました。
(3)匂い源探索の研究:優れた嗅覚と探索能力を持つ昆虫のしくみを模倣したり、そのまま機械に組み込んで利用する研究を行っています。昆虫が自ら匂いを受容し判断してロボットを操作する昆虫操縦型ロボットや、昆虫の触角を匂いセンサとして利用するデバイスの開発を行ってきました。
基礎研究が主体の研究室ですが、以下の分野で産学連携の可能性があります。これまでに、昆虫の視覚情報処理を模倣した移動体の障害物回避機構、昆虫の嗅覚を利用したバイオセンサの開発等の産学連携研究に携わった経験があります。
・衝突回避や匂い源探索など、動物行動に基づく生物模倣ロボティクス
・昆虫などの小動物の行動・運動解析(高速度撮影、三次元再構築)、電気生理学実験(筋電位、触角電図、神経活動計測等)
・昆虫の行動メカニズムに基づく害虫防除
・教材としての安価で簡易な電気生理学や行動計測装置の開発