我が国で深刻な社会問題になっている鉄筋コンクリート(RC)構造物の老朽化対策に取り組みます。具体的には、既設RC構造物の劣化診断、機能性塗料を利用したコンクリートの変状モニタリング、新設RC構造物の高耐久化を目指した産官学の協働システム、超高強度/超高耐久コンクリートパネルを用いた恒久的な補修工法の開発等が近年のテーマです。コンクリート材料の高性能化/高機能化を通して安全・快適な社会の実現に貢献します。
・群馬県では、新設RC構造物の耐久性能向上策として、山口県の成功例を参考に、全国に先立ってRC構造物の品質確保ガイドラインを産官学協働により策定しました。現在までに数百例の県内RC構造物の施工データが蓄積されています。今後は、5年に一度の法令点検による劣化調査結果と施工データを照合し、継続的なガイドラインの改訂を行うことにより、群馬県オリジナルの品質確保システムへ発展させていきます。将来の県内の社会資本構造物の維持管理費の大幅な縮減に資する試みとして期待されます。
・コンクリート構造物の劣化問題は、地方の小規模橋梁で深刻さが増しています。その原因として「技術者不足」「作業員の高齢化」「予算不足」などが挙げられます。そこで、「施工に技術力を要しない」「作業員の体力的な負荷が小さい」を基本コンセプトとした予防保全工法を提案しました。具体的には、ポリマー含浸技術により緻密化/高強度化した薄肉コンクリートパネルを劣化部材に左官工法で貼り付けて劣化因子の侵入を恒久的に防止する工法としています。すでにモデル施工により良好な施工性を確認しており、国土交通省のSBIR建設技術研究開発助成金制度に採択されました。
本研究室では、超高強度コンクリート技術を有する二次製品メーカーと共同で、小規模橋梁を対象とした簡易かつ恒久的な補修工法の研究・開発に取り組んでいます。また、塗料メーカーや道路会社と共同で機能性塗料(導電性塗料)をコンクリートの劣化モニタリングに応用する技術開発を行っています。これらの研究開発には、実験室内での研究に加えて、実構造物を用いた実証実験が欠かせません。また、群馬県における社会基盤RC構造物の品質確保システムは、土木よりもかぶりの小さな建築構造物の長期耐久性確保にも応用可能であると考えられます。